【開催レポート】まちごこち文庫1周年記念トークイベント「『本のある場』の役割 ─ 人と本、まちをつなぐ場所を考える ─」

9月11日(金)に「『本のある場』の役割 ─ 人と本、まちをつなぐ場所を考える ─」をテーマに、まちごこち文庫1周年記念トークイベントを開催しました。
ゲストにお迎えしたのは、京都・神宮丸太町で誠光社を営む堀部篤史さん。聞き手は、まちごこち文庫の立ち上げメンバーであり、本棚オーナーでもある安田翔さんです。
堀部さんが本屋で働き始めたきっかけから、恵文社一乗寺店を経て独立し、誠光社を始めたときのこと。そして、独立書店として10年間お店を続ける中で考えてきたことまで、幅広くお話を伺いました。
ここでは、当日のトークから印象に残ったお話をご紹介します。
|本屋を「小商い」として続けていく
まずお話に出てきたのが、本屋を取り巻く環境の変化について。
出版や流通の仕組みが変わり、かつてのように「みんなが欲しいものを仕入れて売る」というだけでは、本屋を続けていくことが難しくなっている。
そうした中で、個人出版社や独立系書店など、これまでとは違う形で本をつくり、届ける動きも広がっているといいます。
誠光社のコンセプトは置かれている本自体だと思われることが多いそうですが、始める時に大切にしたのは、「生業」として、どうすれば生活を成り立たせながら続けていけるかということ。選書についても、自分の知識や感覚で決めるのではなく、お客さんが求めているものとの間でバランスを取りながら行っているそうです。
「小商い」として本屋を続けていく。そのための現実的な設計と、日々の営みに向き合う姿勢に、誠光社の10年間を支えるものがあるように感じました。
|「コミュニティ」とは?
トークの中で、特に印象に残ったキーワードが「コミュニティ」です。
そもそも、「コミュニティをつくる」という言葉が、一人歩きしているのではないか。
堀部さんは、コミュニティや文化を最初から目的にするのではなく、まずは自分たちの生活や商いを続けていくことが大切だと話されました。
そうした営みの先に人との関係が生まれ、あとから振り返って「これってコミュニティなのかもしれない」と分かる。完成されたコミュニティが先にあるのではなく、関係性の中から、結果として立ち上がってくるもの。
日頃、気軽に使っている「コミュニティ」という言葉について、改めて考えさせられました。
また、グローバルな資本主義の中で、人が「消費者」として扱われる場面が増えている一方、居酒屋やカフェ、銭湯などには、消費者としてではなく、一人の人間として関われる側面があるというお話もありました。
何かを買うためだけではなく、誰かと話したり、ともに時間を過ごしたり、自分なりの関わり方ができる。そうした場所をいくつも持っていることが、生活のゆとりにつながるのではないか、と堀部さんは言います。
|「差し出す」ことで生まれる関係
もう一つ、心に残っているのが「何かを差し出す」という考え方。
ここでいう「差し出す」は、お金だけではありません。
時間を使うこと。
お店の都合に合わせること。
誰かを手伝うこと。
そうしたものも含めて、先に何かを差し出す。
それがすぐに同じ価値のものとして返ってくるのではなく、時間を置いて、いつか何らかの形で返ってくる。そこには、商品とお金をその場で交換する「等価交換」とは少し違う、「贈与」に近い関係があります。
自分から何かを差し出すことで、少しずつ関係が育っていく。それは、お客さんと店との関係にも、人と人との関係にも通じるものなのだと思います。
|一つの店から、まちという「面」へ
こうした関係は、一つの店の中だけで完結するものでもありません。
本屋を訪れた人が、近隣のカフェや飲食店を訪れる。そこでまた別の人や場所と出会う。堀部さんは、「消費」に「時間」が加わることで、それが「体験」になっていくというお話もされていました。
近くのお店や、顔を知っている人のお店を選んで飲食する。日々のお金の使い方が、時間はかかるけれども結果としてコミュニティをつくっていくこともある。
一つの店で生まれた関係が、別の場所へと広がっていく。そうして、少しずつまちが「面」としてつながっていくのかもしれません。
小商いとしての本屋、コミュニティ、「消費者」と「お客さん」など、堀部さんの経験や具体的なエピソードを交えながら、奥深いお話を伺うことができました。
参加者の中には、自分でお店をされている方、これから始めたいと思っている方も多く、それぞれの活動について考えるきっかけになったのではないかと思います。
ご参加いただいた皆さま、そして貴重なお話を聞かせてくださった堀部さん、聞き手を務めてくださった安田さん、ありがとうございました!

