【LIFE PICNIC】Vol.13「となりのアニミズム」イベントレポート
LIFE PICNIC vol13が2026年7月17日(金)、BONCHIのTENにて開催されました。
そもそもLIFE PICNICって??
ゲストトークやみなさんとの対話を通して、多様な価値観を知り、自分はどうありたいのか?どう生きたいのか?を考えます。「生きる」という壮大なテーマを掲げながらも、雰囲気はピクニック。重さと軽さ、真剣さと楽しさ、学びと遊びを混ぜ合わせて、自分たちにとっての「当たり前の世界」を見直す時間です。
今回もピクニックのお供は、okageさんのサンドウィッチです。
本日のゲストは、人類学者の奥野克巳さん 。ナビゲーターはエッセイ作家・MCのしまだあやさんです。
サンドウィッチを食べながら、お隣のピクニック仲間とおしゃべりしたり、くつろいだり…ゆるやかにイベントが始まります。
本日のテーマ「となりのアニミズム」
運営の金さんから本日のテーマについて。
金さん「人類学の本を読んでいる中で出会った言葉がありました。」
”いのちが石の中にあるのではない。石がいのちの中にある”
金さん「アニミズムを説明する言葉だといわれています…自分の中でまだ理解できていないのですが、奥野さんのお話を聞いて深められたらいいなと思っています。」
金さん「さらに、アニミズムは私たちの身近にあるものかも?という思いから『となりのアニミズム』というテーマを設定しました。」
しまださん「ありがとうございます。それでは早速、この言葉について教えてもらってもいいですか?」
奥野さん「もともと精霊信仰で言われてきた『木の中に魂、命がある』などという考え方を逆転したものでした。」
しまださん「ほうほう」
奥野さん「命は世界中にあふれていますよね。その中に石がある、動物もいて、人間もいる。」
なんとなくイメージは湧くものの、まだしっくりこない…。
奥野さんのお話や私たちのとなりにある、身近なものに当てはめながら深めていきたいと思います。
自己紹介・活動紹介
奥野さん「高校生の時、夢があったんです。それは日本脱出です。」
しまださん「ほほう」
奥野さん「サッカーで怪我をして…療養中に思ったんです。『自分は何をしているのだろう』って…なぜ勉強をするのだろう。なぜ大学にいくのだろう…広い世界を見た方がいいなって思いました。」
しまださん「当たり前を考え直す。それが現在の活動につながる出発点だったんですね。」
”日本脱出”を掲げ、世界各地を旅した奥野さん。
メキシコでテペワノ族と暮らした話、バングラデシュで僧侶になった話、興味深いお話が飛び出します。
奥野さん「インドネシアを一年くらい放浪したんです。その中で人々の語り、神話が面白いと思ったんです。」
それから、大学院に入った奥野さん。インドネシアのカリス族を中心に、彼らが信仰するシャーマニズムと呪術についての研究を始めます。
奥野さん「シャーマニズムはアニミズムが基本になっています。例えば、豚の肝臓を見て病気が治るか、共同体が安寧かどうかを占ったりします。」
奥野さん「カリスという民族は、焼畑稲作民でして…日本人の私にとって懐かしさを感じるんです。例えば、毎日何かしらの儀礼を行います…彼らを通してかつての日本人の暮らしを想像したりしますね。」
しまださん「うんうん」
奥野さん「人類学では人類史が大事です。AIやテクノロジーが発達する現代ですが…もともと人間とはどういう存在だったのかを知りたいと思うようになりました。」
このような「問い」を調べるために、奥野さんがフィールドワークに向かった先がプナンという民族でした。
奥野さん「彼らは狩猟採集民です。森の中に入って動物や植物を取る、ということを未だに行っています。食料をめがけて移動をしながら生活します。」
20年以上、彼らのもとに通い、共に生活をする奥野さん。その中でたくさんの気づきがあったのだそう。後半のお話に続きます。
アニミズムって?
本題に移ります。
しまださん「改めて、アニミズムとは何ですか?」
奥野さん「これは畜魂碑です。動物の魂を弔うために立てられた石碑です。ここでは動物を殺して、私たちが生かされているという贖罪意識と、自分たちの産業が永続していくことを祈っている。つまり、動物たちが帰ってきてほしいという意味でもあるんです…往還する、これがアニミズムです。」
「往還」向こう側の世界とこちら側の世界を行き来する…それがアニミズム?
まだまだ核心に近づけない、”アニミズム”の周りを浮遊している感覚…
ここで、しまださんから奥野さんに「これってアニミズム?」なエピソードを投げかけます。
しまださん「友達の子供がテントウムシと遊んでいたんです。帰る時間になって大泣きして…理由を聞いてみると、『なぜテントウムシと一緒にご飯を食べられないのか、暮らせないのか』と。彼は、自分とテントウムシでは”世界”が違うことを知って泣いたんです。」
奥野さん「はっきりと、これはアニミズムだ!ということはできませんが…人間以外のものとの内面的なつながり、共通性、同じような存在と思う気持ち、これはアニミズム的だと思います。」
しまださん「子供たちは自然と取り入れているように感じますね。」
奥野さん「私たちは皆アニミストだと言えます。ただし、科学や制度などがそれを抑圧してしまっているのかもしれません。」
しまださん「ここで…みなさんの中でも『これってアニミズムかも?』を考えてみてください。」
捨てることができないぬいぐるみ、土地と自分が一体化している感覚、アクスタと一緒に写真を撮る…
みなさんのアニミズム的なエピソードが広がります。
奥野さん「境界線がなくなるという感覚です。自他、主客といった関係にある境界を溶かしていくような…」
アニミズムを育むには
奥野さん「世界を切り分けないことです。例えば、ボルネオ島には(猿の一種である)”リーフモンキー”に『人間が来たぞ』と警告をしてくれる”リーフモンキー”という鳥がいます。」
しまださん「猿のリーフモンキーと鳥のリーフモンキーがいるってことですか?」
奥野さん「そうです。まさに人間的な振る舞いをします…彼らは分けないんです…命名の中に刻み付けられています。これはとてもアニミズムだと思います。」
しまださん「人間も猿も鳥もつながっている存在として捉えているんですね。」
自分、他者という関係性で物事を捉えない。これがアニミズム的な思考なのかも?
次のトークテーマに進みます。
質疑応答
ここからは事前に頂いた質問にお答えいただきます。
奥野さん「彼らには”個人所有”の感覚がありません。みんなで分け合うんです。食料は誰のものでもないんです。分け与えるのが当たり前。」
しまださん「プナンに行ったら、このスマホもみんなのものってことですか?」
奥野さん「そうですね。そして彼らは”イマ・ココ”を生きています。過去を振り返らない…反省しないんです。」
しまださん「だから『ありがとう』や『ごめんなさい』の概念すらないのですね。」
私たちにはなかなか理解しがたい感覚に驚かされます。
奥野さん「プナンの人はどう考えるか、常に考えています。」
奥野さん「彼らにとって一番重要なことは”分かち合うこと”です。彼らには国家がない、制度の外側にあります。そのため、プナンの共同体では”みすぼらしい人”がリーダーなんですよ。つまり何も持っていない人です。周りに分け与えているから。」
しまださん「ええ!」
奥野さん「”全然意味が分からないこと”から自分たちの”当たり前”を見直すことをしています。」
しまださん「”分からなさ”が自分たちを内省する入口になるのか…」
”分からなさ”によって相手を切り分けない。自分たちの”当たり前”を見つめ直す。大切な学びがありました。
会場からも奥野さんに質問があがります。
奥野さんのお話の中で度々触れられていた「世界を切り分けない」について、
Aさん「肯定したいが受け入れきれない矛盾があります。ただ存在していることに人間は耐えられなるのでしょうか?」
奥野さん「テクノロジーやAIの進歩によって現代社会はさらに複雑になっています。不安を解消するどころか悪化している…」
私たちが”進化”という名目のもと構築してきた、合理主義や科学主義の土台。これらを問い直す手立てが「世界を切り分けない思考」だと奥野さんは言います。
奥野さん「アニミズムは希望です…それは未開社会の人たちの思考でも私たちの古い思考でもないんです。私たちがもっている思考のパターンなんです。しかし、抑圧されてしまっている。それ自体をアニミズム的なものを再発見することによって見出す。」
奥野さんのお話を通して気づかされた、私たちが”切り分けて”しまっていたもの。それらをもっとグラデーション的に考える。複雑化する社会で”自分たちはどう生きるか”を見出していけるのかもしれない。
ミニワーク
ここからは、参加者の皆さん同士がワークを通してアニミズムを深めます。
本日のワークは「多自然さんぽ」
しまださん「今回は…『私はイスです』で始めてください。擬人化するのではなく、なりきってくださいね!」
いろんな個性を持った「イス」が生まれました。
「私はイスです。私っていろんな”命”でできているな~」
※イスは木や布、様々な素材(命)からできているのです。
「私はイスです。心地よく座って欲しいな」
「私はイスです。どこに置かれるんだろう」
しまださん「難しいながらも、新しい視点、新しい世界が見えたのでは…?奥野さん、本日はありがとうございました。」
編集後記
最近、二項対立ではない”連続体”的なものの見方について考えていました。奥野さんのアニミズムのお話ででてきた「往還」「切り分けない」「境界線を溶かす」といった視点。自分の中で考えていたことと混ざり合ったような感覚でした。アニミズムについて、はっきりとした輪郭をつかめたわけではありませんが、アニミズムに付随する様々なキーワードと身近な関心ごとや問題意識と重ね合わせながら、それぞれの味わい方ができるものなのかな、と思います。
私たちがあまりにも分類しすぎていたもの。それらをもう一度考え直し、フラットに眺めてみる。曖昧さの奥にある豊かさ。じっくり時間をかけながら見出していきたいです。
(文:BONCHIスタッフ 清結菜)
