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【LIFE PICNIC】Vol.5 「交換と贈与」イベントレポート

「働く」と「遊ぶ」の間には、何があるんだろう。
「社会」と「個人」の間には、何があるんだろう。
「子ども」と「大人」の間には、
「生」と「死」の間には?

LIFE PICNIC ~「生きる」をめぐる、ぐるぐる時間~ vol.5が、2024年5月10日(金)の夜、BONCHI1階で開催されました。

「人生」という大きなテーマを、カジュアルに肩の力を抜いて。
いまの年齢・職業・役割・肩書きをちょっと脇において。
「ピクニック仲間」と一緒に、こり固まった「常識」や「当たり前」、その奥にある「自分のコトバ」を見つける時間の始まりです。

まず初めに、MCのしまだあやさんから、これからみんなで過ごす時間について一言。

「ゲストのお話や参加者さん同士の対話を通して、私たちの周りにある身近な出来事や思い出といったものを新しい概念や言葉で捉えなおして、みなさん一人一人の人生の面白さを再発見してもらえたらいいなと思っています。」

今回もピクニックのおともは、okageさんのサンドウィッチ!
ならまちパン工房okage WEBサイト▶︎https://www.narapan-okage.com/

「交換」と「贈与」って何??

今回のゲストは、教育者・哲学研究者で『世界は贈与でできている』の著者である近内悠太さん。現在は、教養と哲学の教育現場を立ち上げ、『知のマッシュアップ』を実践しています、とのこと。

ここで気になるキーワード『知のマッシュアップ』についてのお話からスタートしました。

「僕、論文を書くのが苦手なんです」と意外な発言が飛び出します。

「物語をつくっちゃうんです。論文って基本的に何かのトピックに対して同じ議論を展開していかないといけないんですけど、僕の場合トピックが脱線してしまう。でも人間の心とかこの世界っていうのは様々な知を統合的に考えていかないと見えてこないと思うんですね。」

近内さんの考える『知のマッシュアップ』は、壁がなくて混ざり合ったものと言うイメージ。
日頃から、型にハマらず色んなものを組み合わせて考えることを心がけているそうです。

ここからは、今回のテーマ「交換と贈与」についてのお話です。

しまださん 「それでは早速ですが、『交換』と『贈与』の違いについて教えてください」

近内さん 「交換は簡単に言えば相手は誰でもいいんです。お金を払って物を得る、瞬間的に終わるものです。一方、お土産について考えてみてください。私たちはお土産を受け取った時、そのものの値段を聞いてお金を渡すということはしないですよね。むしろ、そのモノには⚪️⚪️さんが私のために買ってきてくれたものという特別な意味やエピソードが加わる。ただの商品でしかなかったものが取り出され、意味を持ったものとして浮かび上がってくる。」

しまださん 「なるほど。そういったエピソードはお金では買えませんもんね」

近内さん 「贈与という概念は古くからあったのですが、僕の考える贈与は受け取ることで始まるというのがポイントです。例えば、学生時代の後輩に『昔先輩に言われた言葉が僕を励ましてくれたんです』と言われたとします。多分その時の自分は何らかの目的や意思を持ってその言葉をかけたわけではないけれど、受け取ったその子にとっては大切な、意味のある言葉だった。何気ない言葉が受け取る人によって意味付けされる、物語性を帯びる。それが贈与だと考えています。」

もしアドバイスに何らかの意思が含まれてしまったら交換になるのでしょうか。

差出人にはいいアドバイスができた自分、という高揚感が生まれたり、その意思が強すぎると相手を支配することにもなるため、贈与ではなく交換となるとのこと。

交換と贈与は、とても絶妙なニュアンスなんですね、、、

近内さんへの6つの問い

ここからは6つの問いをもとに近内さんの人生についてお話を聞いていきます。

しまださん 「近内さんのこれまでの人生の中での印象的な贈与体験を教えてください」

近内さん 「大学時代のある教授から言われた言葉が今でも印象に残っています。」

当時、物書きになろうと決めて活動していた近内さん。そんな時、”自分は空っぽだな”と感じることがあって悩んでいたのだそう。そんな時その先生からもらった言葉に勇気づけられたといいます。

近内さん 「僕はその言葉を聞いて、空っぽだと思うことは当然で、そこからが始まりなんだ、と思えることができたんですよ。たぶんこの事を話しても本人は覚えていないと思うんですけどね(笑)」
「贈与は交換と違って何かお返しすることはできないけれど、こんな風にメッセンジャーとしてみなさんに伝えることはできる。伝えなければならないんだという使命を感じるんですよね。」

大学時代の恩師のサイン入り著書

しまださん 「贈与は受け取ることで始まる、ということでしたけどそもそも自分が受け取っていたと気づくにはどうしたらいいのでしょうか」

近内さん 「そもそも僕はこの世界が今日も普通に動いているということ自体当たり前ではない、世界は危うい物であるという前提を持っています。」

しまださん 「自分の持っている当たり前を相対化してみる。身近なことからでいいから問いをもってみるということが大事なのかもしれませんね。」
「それでいうと私、ウニを最初に食べようと思った人がなんでその思考に至ったのか不思議です。明らかに危ないでしょ。」

場内から笑いがおこります!

近内さん 「確かに(笑)私たちが普通にウニを食べられるのも多くの人や物が関わっているんですよね。さらに言えば、知っているというのは教えてもらったからであって、そういった知識や経験の伝達があるから私たちは普通に生きることができているんです。」

知識や経験を受け取った人が次に伝えていく。
贈与は、そのようにして繰り返されていきます。
今日も何事もなく過ごせている、その影には様々な人の支えがあるのだと気がつくことが大切なのだと感じました。

過去にあった「贈与み」を探るワークの時間

興味深いお話を聞いて場内も温まったところで、ワークの時間にうつります!
今回は過去にあった贈与みを探るワーク。まずスマホの中から「贈与み」のある写真を3枚選びます。
ここでしまださん「『贈与み』というのがポイントです。何となく贈与っぽいなと思う物を選んでください、直感で大丈夫ですよ〜」

『贈与み』を感じる写真の共有タイムがスタート。
参加者の方一人一人が『贈与み』を感じる写真を見せ合って、嬉しそうに、そして懐かしそうに喋っていました。

初対面の人同士が多い中『贈与み』を感じる写真を見せ合いながら、その人が何に感動し、心動かされたのかを伝え合う時間。
価値判断なしに相手の話に耳を傾け、受け取る。普段は言葉にすることがためらわれるような自分の心の中にある感情も自然と口にすることができる、そんな温かい雰囲気に包まれていました。

それぞれが考えた『贈与み』を付箋に書いて共有

まとめ

最後に、しまださんと近内さんから。

しまださん 「点(一枚の写真)では気づかないことも線(3枚の写真に共通する物語)にしてみることで気づくことってありますよね。そんなみなさんの物語を聞かせてもらって、どの物語もとても素敵でこれこそまさに贈与なのかもしれないなと感じました。」

近内さん 「今回贈与をテーマにお話しさせてもらったんですけど、想像していた以上にみなさんが熱中して主体的にワークに取り組んでくださっていてとても嬉しかったです。本日はお招きいただきありがとうございました!」

一人一人が自分自身の人生の面白さを再発見し、自分はたくさんの「贈与」を受け取っていたのだと気づくきっかけになったのではないでしょうか。

最後はみんなで写真撮影!

編集後記

LIFE PICNICへの参加は今回が初めてだったため、どのような回になるのかドキドキワクワクしながら当日を迎えました。

最初はなかなか捉えにくかった「贈与」という概念でしたが、ゲストの方のお話やPICNIC仲間との対話を通して私の周りにはたくさんの「贈与」があったのだなと気づくことができました。生きていく上で交換はもちろん必要ですが、私たちの人生を豊かにしてくれているのはこの「贈与」という現象であるように感じました。普段は当たり前すぎて見逃していた身の回りのことに目を向け、見つめ直すいいきっかけとなりました。

皆さんと一緒にLIFE PICNICに参加出来て楽しかったです。ありがとうございました!

次回のご案内

次回、第6回目は「心と体の余白」をテーマに伊藤亜紗さんをゲストスピーカーとしてお招きします。
7月26日(金)19:00〜開催予定です。お申し込みの開始まで少しお待ちください。

(文:BONCHIスタッフ 清結菜)

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