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【 LIFE PICNIC 】Vol.2「仕事と遊び」イベントレポート

「働く」と「遊ぶ」の間には、何があるんだろう。
「社会」と「個人」の間には、何があるんだろう。
「子ども」と「大人」の間には、
「生」と「死」の間には?

LIFE PICNIC ~「生きる」をめぐる、ぐるぐる時間~ vol.2が、2023年9月29日、BONCHIにて開催されました。
生きていると日々出会う、さまざまな問いかけ。
LIFE PICNICは、それらに対し、答えを提供するイベントではありません。

問いと答えの間にあるものをゆるくほどき、いろんな選択肢をはさめるように、ゲストスピーカーさんのお話やグループトークの時間を通じてヒントをお届けしていきます。

仕事と遊びについて

第2回目のLIFE PICNICがはじまりました。

最初に、BONCHIを運営する中島章さんから。

「前回のテーマはライフシフトでした。キャリアの八割は偶然から始まるというクランボルツ教授の偶発性理論の話から始まりました。きょう、この会場からも何かが偶発的に生まれていくといいな。」

今回は「仕事と遊び」をテーマに唐川靖弘さんにお話をうかがっていきます。

会場からはサンドウィッチをむしゃむしゃ、と食べる音が聞こえるなかでー

「僕うろうろアリを育てたいんです。」

静寂を突き破るように唐川さん。

「今日はその話をしていくんですが、まずはぼくのキャリアを大まかにお話しすると……。外資系の企業を数社経験して、マーケティングの仕事をしてきました。スタバやダイソンが日本に進出する際の支援を行ってきたんですね。でも、娘が生まれたときに人生が変わって。『人の消費に火をつける』というよりは、『これからの世代にマーケティングを何か役立てないかな』。そう思っていたときに一冊の本と出会って。環境課題をビジネスで解決するということをしてきたんです。」

「まあ、今日は修学旅行以来の奈良なんです。さっきもうサウナに入って体を整えて、ビールも飲んでポワンとしています(笑)。みなさんも気楽に楽しんでください。」と穏やかな表情の唐川さん。

続けてMCのしまだあやさん。

「今日はゲストトークのフリをしたピクニックなんです。会場にいるみんなはピクニックフレンドと思って、楽しんでくださいね。」

きっかけはハロウィン⁈うろうろアリとの出会い

しまださん「じゃあ、早速ですけど、働きアリとうろうろアリの話をお願いします。」

唐川さん「働きアリの要素というのは、完璧主義とか、最短距離で成果を出すとか。そんな働きアリに、遊び心を注入したいということなんです。」「あのね、経営学的にも遊ぶって注目されているんです。自分の熱を注げることを通じて、いろんな価値観をインストールするということですね。」

しまださん「経営学的にも注目されているってどういうことですか?」

唐川さん「うろうろアリがいる巣のほうが、中長期的に巣として持続できるといわれているんです。」

え〜っ?とおどろくしまださん。

「先頭のアリがエラーを起こしてしまい、一つの群れ全体が死んでしまうという事例があるんです。人間の組織にも言えませんか?社員一人一人が『今どこに向かって歩いているんだっけ?』『うちの会社って、僕って何のために仕事しているんだっけ?』と意識することが大事なんですよ」

しまださん「なるほど……!働きアリからうろうろアリに転生するという話じゃなくて。働きアリな自分の心のなかに、ちょっとうろうろアリを育ててみるということですかね?」

唐川さん「そうそう!」

つづけてしまださんから「どうして、うろうろアリという言葉が生まれたの?」という質問が出ました。

「それはね〜、アメリカで経験したハロウィンがきっかけだったんですよ。」「子どもがお菓子をもらってきたんです。古い家に住んでいたのでね。お菓子を置いておいたら、アリがわ〜〜〜って!群がっていたんです。でもね、よくみたら、ちょっと違う動き方をしているアリたちがいたんですよ。台所のほうに自分の足で歩いていくきままなアリが。それを見てうろうろアリだ、って。36歳のときでしたね」

唐川さんのうろうろアリな20代

ここからは、そんな唐川さんのキャリアを大学卒業から振り返っていきます。

「ぼくは大学を卒業したんですけど就職をしなくて。地元の広島に逃げ帰ったんです。それで父の営んでいた家業を手伝っていたんですけど。昼休みに瀬戸内海の島をうろうろすることがあって、その時の景色が、ほんとうにほんとうにきれいだったんです。今でも思い出せる……それでハッとしたんです。『もっと、こういう心の動くところに出かけていかないといけないんじゃないか』『逃げちゃダメじゃん』って。それで、24歳でアメリカに行ったんです。英語は話せるつもりでいたので。でもね。全然通用しなかった。マクドナルドでチョコレートシェイクを頼むじゃないですか。2回聞き返されて、ドンッて、オレンジジュースが出てきたんですよ(笑)。それから帰国して、留学経験があるということだけを推して、コンサル会社に就職をして。」

しまだ「唐川さん、うろうろされていたんですね。」

唐川「そうそう、まったくまっすぐじゃない(笑)。」

その後、憧れのブランド会社に滑り込み、みるみるうちにビジネスマンとして活躍し始めた唐川さん。独立を果たします。しかし。

唐川「独立したつもりが“孤立”だったんですよ。仕事が全然なくて。会社に守られていたんですよね。あまりに暇すぎて、公園を毎日10周ぐらいしていましたね」」

しまだ「またしてもうろうろされていたんですね(笑)。でも、それだけ歩いたら、いっぱい内省できそう。」

唐川「そうなんですよ。時間はある、でもお金がない。だから考えるんです。当時の発見は、BOOK OFFの100円コーナーなんです。そこで1日1冊本を買って読み始めました。それを続けるうち、いろんな言葉が自分にインプットされるようになって。その覚えたての言葉を、営業の現場で話すと、仕事につながっていったんです。」

そうして、ミルフィーユのように小さな仕事を積み重ねていったという唐川さん。

小さなことから自分を変えていく

ちなみに、本を選ぶときのコツがあるそう。

唐川「目をつむって買う。選ばないんですよ。おすすめされないことが人の幅をつくるんですよ。」

しまだ「目は開けちゃダメ?」

唐川「ジャケ買いもいいですよね。」

しまだ「ほしい本を手にいれる、じゃなくて。とりあえず行って、買うということですね。面白い。」

どうやら、小さくはじめられることから自分に変化を生めるようです。

ここで、おもむろに靴下を見せてくれた唐川さん。

唐川「ぼくはね、かわいい靴下を履くんです。小さい、マイ儀式をしたい。かわいい靴下を履いて打ち合わせに行ったら、面白くない提案できないじゃないですか(笑)。」

仕事とは?越境タイミングは?一番の衝撃シーンは?唐川さんを質問攻め

ここからは、しまださんからの質問タイム。つぎつぎと問いが続きます。

仕事とは?

「新しい自分を表現するための小さな実験ですね。」

人生の越境タイミングは?

「自分の価値観が広がるきっかけとなる経験をしたときですね。苦しいときに広がるんですよね。」
「それから子ども。世界を見るレンズが変わったんです。」

ちなみに一番の衝撃シーンは?

「BOP(bottom of the pyramid)と呼ばれる層がいらっしゃるんです。みなさんが座っているゴザ1枚に3人家族が生活しているような。仕事で、そういうおうちに入り込んで生活したこともあって……。インドのムンバイのスラム街に行った時です。信号を人も車もみんな無視しているんです。だから僕は歩けないんです。でも、そこでね、野良犬が横をたったったったっといくんです。でも、僕も3週間目に道が見えたんです。その時ですね(笑)」

面白い話が次々と出てくる唐川さん。参加者たちもどんどん引き込まれていきます。

あと、心がけていることってありますか?

「負けること。ぼくはもう48歳だから、まあ、おじさん。だんだん勝てる勝負ばかりするようになるんですけど、自分がまだまだ弱いと思える経験をしたくて、ブラジリアン柔術を始めました。『小さいな自分』と思える経験が大事なんです。」

うろうろアリを自分のなかに育てよう。ワークの時間

続けてワークです。自分を突き動かすものを考えるエクササイズを行います。10分の予定が15分に。その後は3人一組に分かれてお互いの話をしていきます。

その様子を、しまださんと唐川さんも身を乗り出して話を聞いていきます。

続けて、カードに書かれた6つの質問をもとに話をしていきます。

会話がなかなか終わらない様子。気づくと、時計は終了予定の21時を過ぎていました。

むすび

最後に唐川さんから。

「みなさんが話をしているのを聞かせていただいたなかで、自分の弱さについて触れるお話があったんです。弱さを見つめて、そこから自分の柱を育てていくのがすごいなと思いました。一人一人の人生の辺境ですよね。ちょっとうまく行っていないなと思うところで感じるいたみ、くるしみ、かなしみ。そういうことが、きっと力になります。どんな環境にいても、力につながってくるから、毎日を楽しく過ごしていただけたらと思います。ぼくもね、駒沢公園を10周していましたから。」

「一番大事なのって、今日を楽しく生きることだと思うんです。今日を小さく楽しく生きる。今日はみなさんとご一緒できて、ぼくは楽しいです。ありがとうございました。」

次回のご案内

次回、第3回はテーマを「人との関係性」とし、ゲストに組織開発専門家の勅使川原 真衣(てしがわら まい)さんをお招きします。
開催日は2023年12月1日。サンドウィッチをご用意してお待ちしています。

  


(文・編集・撮影:大越 はじめ)

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