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【 LIFE PICNIC 】Vol.1「ライフシフト」イベントレポート

「働く」と「遊ぶ」の間には、何があるんだろう。
「社会」と「個人」の間には、何があるんだろう。
「子ども」と「大人」の間には、
「生」と「死」の間には?

LIFE PICNIC ~「生きる」をめぐる、ぐるぐる時間~ vol.1が、2023年7月21日、BONCHIにて開催されました。
生きていると日々出会う、さまざまな問いかけ。
LIFE PICNICは、それらに対し、答えを提供するイベントではありません。

問いと答えの間にあるものをゆるくほどき、いろんな選択肢をはさめるように、ゲストスピーカーさんのお話やグループトークの時間を通じてヒントをお届けしていきます。

第1回の概要

「ライフシフト」がテーマの第1回。ゲストは眞鍋 邦大(まなべ くにひろ)さん。

【龍谷大学経営学部 准教授/株式会社 四国食べる通信 代表取締役】

ナビゲーターのエッセイ作家・MCのしまだあやさんと共に、「ピクニック」らしく、はじまりから解散まで、和やかで笑顔が尽きない会となりました。

当日の様子

カラフルなラグの敷かれたBONCHI1階は、いつもより開放的に感じられます!

参加者の皆さんは、受付でサンドイッチと飲みものを受け取ると、靴を脱いでラグにあがってひとやすみ。
これからはじまるイベントへのドキドキと、普段とは少し違った出会いが生まれそうなワクワクが会場を満たします。きりかぶを囲んで隣り合った人と自然に会話が生まれる空間に、温かい雰囲気が広がっていました。
飲みながら、食べながら。
ピクニックのはじまりにふさわしく、それぞれが思い思いに空間を楽しみつつ、ピクニックはスタートしました。

ならまちでパン工房を営むokageさんの特製サンドです

ここで、会場のみなさんが手にしているサンドウィッチを見てナビゲーターのしまださん。

「サンドウィッチのパンとパンの間には、どんな具をはさんでもいい。自分をパンに置き換えたとして、何をはさんでいくか。正解はないんです」

ゲストトーク

「そういうわけで、自分はパンなんですが、今日のゲストはポンさんです」と、会場の笑いを誘うしまださん。

そう、ゲストの眞鍋さんは「ポン眞鍋」という活動名を使うことが多いんです。
「なんでポンなんだろう?」「今日は本名を使っている理由はなんだろう?」
会場からは問いかけが浮かんできます。
「じゃあ、自分の名前はどう使い分けているだろう?」
そんな心の中の声も聞こえてくるようです。
ゲストトークを通じて、自分の問いとその答えの間にあるものを探していく試み。それがこのピクニックを通して体験できるはず。

会場の皆さんのワクワクが膨らんでいく中、ポンさんの自己紹介から、ゲストトークがスタートしました。

用意してきた経歴の「間」

現在、大学の教員をしながら、食に対して農業と経営という両方向からのアプローチを行うポンさん。わかりやすい肩書はいくつかあれど、それだけが自分のすべてではない、という確信を持つポンさんのライフシフトとは、どんなものだったのでしょうか。

ポンさん 「ライフシフトがテーマということで、自分が何を決断しながら今に至っているかを考えたときに、最初に大きな決断をしたのは、野球だったんです」

東京大学で野球部に所属していたポンさん。自身が出場した六大学野球の写真を見ながら、そう語ります。

楽しそうに野球を語るポンさん!

ポンさん 「大学院に行ってもずっと野球を続けていて、昼間は授業を受けながらヘッドコーチをして、夜に研究室で勉強するみたいな毎日でした。結局15~16年ずっと野球を続けたから、社会人になるまでは野球でだいぶ人格形成されましたね」

しまださん 「なるほど、じゃあ社会人になる前から、後輩に何かを教えるという経験を既にされてたんですね」

ポンさん 「そんな風に捉えられたことなかったなあ。でもそうかもしれないですね」

しまださん 「そうですよ、気になりました」

用意された写真や経歴の「間」に何があったか好奇心をもってあいづちを挟んでいくしまださんに、ポンさんの話しぶりも、どんどんと楽しさが湧き出てくるようです。

そうして、大学生活を野球一色で過ごしてきた中で迫られた、就職活動という第二の大きな選択。

ここでは、「一人前になりたい=早く稼ぎたい」という思いから、外資系企業に絞ります。

就職活動の中で「金融業界の方が向いているのかもしれない」とう手ごたえを感じたポンさん。
リーマンブラザーズに就職を決めた理由は、「一番自分に合わなさそうだから」。

他と違った成長が得られそうと感じました。

しかし数年後、世界に大きな影響をもたらしたリーマン・ショックが起こり、働いていた会社が倒産してしまいます。

同僚たちが転職活動に奔走する中、ポンさんが抱いたのは、「海外で働く経験がしたい」「もう一度スポーツに関わりたい」という想いでした。

そして、ポンさんが掴んだのは、アメリカの野球リーグで手伝いをしながら間近でスポーツビジネスを学ぶ機会でした。経営破綻をある種のチャンスとしたのです。

その後、東京に戻って再就職したポンさんは、東京で働くことへのしんどさを覚えたといいます。東京という都市そのものに、閉塞感や男性中心的な価値観を感じ取ったとも。

これからは、その反対である「地方」「女性」が大事なキーワードになるのではないかと直感し、生まれ育った香川県にある小豆島に移り住みます。

ライフシフトと、人との出会い

ポンさん 「瀬戸内海の写真を見ても地元の人は特に何も思わない。でも、海なし県の方は、素敵!行ってみたい!とテンションが上がる。それが重要だと思っていて。場所、見方、視点を変えれば、価値があると思ってくれる人がいるんです」

小豆島の材料を利用したポン菓子を売りはじめたことで、“ポン・眞鍋”と呼ばれるようになりました。

その後は会社を立ち上げたり、企業の経営戦略を担ったり、博士号を取得し龍谷大学で教鞭をとるようになったりと、さまざまな分野で活躍されるポンさんですが、「独立してからは、自分で大きな選択や決断をすることが減った」といいます。

自ら目的をもって選択したことよりも、周囲の方からの紹介やご縁で現在の仕事に繋がったことがたくさんあるそうです。

そこで大切なのは、自分のやりたいことを常に発信していくこと、そして「他者を信じること」。自分よりも他人のほうがわかっていることがある、できると思ってくれているからこそ話をもらえるのだ、と語るポンさん。

一見すると波乱万丈にも見えるポンさんが、どのライフシフトの場面も軽快に語る。その強さや情熱の秘訣を、この部分に見出した方も多かったように思います。

しまださん 「ライフシフトにあたって、増えたものや減ったものはありましたか?」

ポンさん 「スーツ、革靴、高い時計は無くなったなあ。あと、服装にはピンクのものを必ずどこかに入れるようになったんだけど」

しまださん 「今日ひとつもピンク無いじゃないですか!」

ポンさん 「たしかに、なんでだろう。僕、なにか変わっちゃったのかなあ(笑)」

しまださんの、気になる!を逃がさない、するどい質問たちに、ポンさんも思わずマイクを忘れて話してしまうほど、楽しくお話していただきました。

おふたりのつくる和やかな空気に包まれながら、ゲストトークが終了。

グループトーク(参加者のみんなで話そう)

休憩時間を挟んで、グループトークが行われました。
名前と好きなサンドウィッチの具を伝えて、自己紹介。
さらに質問が書かれたカードを引き、それに答えることをきっかけに、会話が弾んでいきます。

用意された6つの質問は、どれも簡単に答えられるようで、「確かにこれを考えるとしっかりと自分を振り返ることになるなあ」と感じさせる、核心に迫るものばかり。

「そうですよね、自分の呼ばれる名前って結構変わりやすい」
「やめたかったけどやめられなかったなあ」なんて声も聞こえてきました。

質問には、思わず、みんながウーン…とうなりながら考え込むグループもあれば、サクサクと回答が出て、どんどんと話が広がっていくグループもありました。

そしてどのグループにも、笑顔の輪が広がっていました。

普段は話す機会がないような年齢層や職業の方と触れ合い、新鮮な気持ちで自分を振り返り、また他者に自分をアピールすることが出来た方が多かったようです。

LIFE PICNICは、自分の人生を振り返り、この先をどうしていこう?どうなるだろう?と考えるきっかけになったのではないでしょうか。

まとめ

イベントの最後に、しまださんはポンさんに、こう問いかけました。

「ライフシフトを楽しむ秘訣とは?」

ポンさんがその答えのヒントとして提示されたのは、計画的偶発性理論。

正確な意味でのキャリアとは、自分が前に進むことでつくってきた轍(わだち)であり、厳密にキャリアを計画することはほぼ不可能だと考えるポンさん。

「キャリアってあとにできるものだから、デザインはできないと思ってるんですよね。僕も、他の人に誘われたり、話題に挙がったことをやってみたことが今に繋がっていて。でも、なんでもなすがままに任せるわけじゃなくて、いろんな偶然を起こすために前向きに行動する人が、いい偶然を獲得できると思うんです」

キャリアの大部分は偶然によってつくられるもので、偶然のチャンスを得るために具体的な行動を起こし、挑戦できる。

だからこそ、このLIFE PICNICのようなイベントに参加したり、積極的に出会いのある場に出たりと、人と「関わる」ことが大切だと語ってくれました。

そして最後に、参加者の皆さんには、今日のピクニックを通じて「シフトしたいと思ったこと」「気づいたこと」を書いてもらいました。

たくさんの収穫がふせんに実りました!

こんな印象的なコメントもありました。

・すてきな「シフトしたいこと」
「やりたいことをもっとやる、から、嫌・やりたくない、の入るすきまをなくす!」
「今のままのスタンスで自然にシフトしていけたらいいな」
「住む場所を変えたい!」

・いい「気づき」
「違和感が原動力」
「ライフシフトには少しの『エイヤ!』が必要」
「年代や職業が違っても、それぞれ似たような思いをもちながら人生のシフトにチャレンジしているのかも、と思った」

みなさんそれぞれが、ゲストトークやグループトークを通じ、多様な価値観、人柄、考え方に出会い、考えるきっかけが生まれていたことがわかります。
サンドウィッチを片手に、リラックスしながら、たくさんの素敵な関わりが生まれた第1回のLIFE PICNIC。

次回、第2回はテーマを「仕事と遊び」とし、ゲストに唐川靖広(からかわ やすひろ)さんをお招きします。
開催日は2023年9月29日。サンドウィッチをご用意してお待ちしています。

  


(文:冨島 和華奈 編集・撮影:大越 はじめ)

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